うつくしいくにのはなしⅡ - forget-me-not
ああ、明日にでもあそこへゆこう
なぜならいまの僕には、
昼も夜も、あの湖の水の
岸にくだける柔らかな音が聞こえるからだ。
車道を走っていようと
汚れた歩道に立っていようと いつも
なぜならいまの僕には、
昼も夜も、あの湖の水の
岸にくだける柔らかな音が聞こえるからだ。
車道を走っていようと
汚れた歩道に立っていようと いつも
W. B. イエーツ「イニスフリーの島へ」
真冬のさなかに 彼は消えていった
小川は凍てつき 空港はどこも人影がまばらだ
そして雪は 街の彫像の輪郭を変え
水銀計は 死にゆく日の入口に沈む
我々の手元の計器でわかるのは
彼が死んだのは 薄暗く凍える日であった
ということだけだ
小川は凍てつき 空港はどこも人影がまばらだ
そして雪は 街の彫像の輪郭を変え
水銀計は 死にゆく日の入口に沈む
我々の手元の計器でわかるのは
彼が死んだのは 薄暗く凍える日であった
ということだけだ
W. H. オーデン「W. B.イエーツを偲ぶ」
1
「国」というのはひとつの概念であるから、例えば国家や国民、国境という言葉もまた概念以上のものではないはずだ。国に「像/イメージ」を預けることで個々の人間はその国に属する国民となる。異なる国どうしの間には国境線が引かれる。また国を時間軸で管理することが歴史となる。
2
靴底が踏みしめる、面積にしてわずかな土地は私のものであり、そこに立つ時間は常に私自身のものである。その場所と時間にひとつの「像/イメージ」を与えるプロセス、それが「うつくしいくにのはなし」である。私たちひとりひとりは「くに」を持っており、それは言葉であり、また記憶でもある。それぞれの「くに」は交差することもあり、あるいは交差しないこともある。私たちの一生とはただそれだけのことだとも言える。
3
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forget-me-not (lead) / 2019
acrylic on paper
415x625x25mm (each)
acrylic on paper
415x625x25mm (each)
tree, snow / 2019
toy, water
φ100x110mm
toy, water
φ100x110mm