白い日 - a white day 池内 晶子 / 中根 秀夫 - 写真
白い日
その石の下に宝がある、
父が小径に立っている。
白い、白い日。
センティフォリア、そのむこうー
生い茂るバラの蔓、
ミルクの草。
あのときほど幸せだったことはない。
いまだかつて僕は
あのときほど幸せだったことはない。
語ることさえできない、
どれだけ幸福に満ちていたろう、
この天国のような庭は。
ジャスミンの根元に石がある。
その石の下に宝がある、
父が小径に立っている。
白い、白い日。
咲いているギンドロヤナギ。
センティフォリア、そのむこうー
生い茂るバラの蔓、
ミルクの草。
いまだかつて僕は
あのときほど幸せだったことはない。
いまだかつて僕は
あのときほど幸せだったことはない。
そこには戻れない、
語ることさえできない、
どれだけ幸福に満ちていたろう、
この天国のような庭は。
アルセーニー・タルコフスキー(訳:坂庭 淳史)
映画監督アンドレイ・タルコフスキー(1932~1886)の自伝的作品『鏡』(1975年製作)は、その脚本段階では、アンドレイの父アルセーニー・タルコフスキーの『白い日』(a White day)という詩のタイトルが付いていたという。白い、白い日…。
自己のイメージはあらゆる鏡像関係を結びつつもまた解かれ、鏡のガラスのわずかな厚みの中で移動を繰り返し、記憶の中の「白い日」の手触りを求める。iPhoneのカメラで、あるいは使い古されたフィルムカメラで。指で傷をなぞるように。