もういちど秋を... -try to remember-

展覧会は終了しました。こちらにページを作りました。

更新 2016年10月17 日

はじめに

たとえば桜吹雪の中を歩いていたら、突然「君を抱きたい」と声がしたらどうしますか? 私はいつまでもうずくまって泣いていました。そして、ふと「もしかしたら、私を人々に見せなさいということかな」と思いました。その時また、その声が「必要な人に会わせるから…」と言いました。かみむらさんと中根さんは、まさにその「必然の出逢いの人」でした。こうして私の思い出はひとつの物語として完成しました。とてもうれしいです。

2016年秋 
武田多恵子


展覧会概要

武田多恵子(詩)かみむら泰一(Sax)中根秀夫(映像)によるコラボレーション。四季をめぐり、5つのユニットから構成される20編の映像詩『もう一度秋を』をお届けします。

 

開催情報

展覧会名 もういちど秋を... - try to remember -
日時 2016年10月17日(月)〜 10月22日(土) 
11:00~19:00(最終日は17:00まで)
会場 GALERIE SOL
東京メトロ有楽町線 銀座一丁目駅 5番出口より徒歩3分 東京メトロ銀座線 京橋駅 3番出口より徒歩5分
〒104-0061 東京都中央区銀座1-5-2 西勢ビル6F (Map) 
tel. 03-6228-6050
  観覧無料 
   

 

オープニング・ライブ

10月17日(月)17:00〜(1時間程度)

本日10月17日17時より、武田多恵子/ かみむら泰一による「生」の朗読と演奏によるパフォーマンスがございます。お気軽に足を御運び下さいませ。所要時間は1時間ほどで、その後は会場を戻し歓談となります。

なお16時30分頃より通常の展示上映を停止し、会場の設営を行います。ご協力くださいますようお願い申しあげます。

 

もういちど秋を (プロローグ)

『もういちど秋を』は、武田多恵子の3つの詩集「麦の耳」(1986年)「流布」(1993年)「蜜月」(2013年)から20編の詩を抜粋し、1年の季節を巡るように5つのユニットに仕分け、「もういちど秋を」という序章を加えて再構成されたひとつの映像詩だ。武田の詩に、サックス奏者かみむら泰一が音楽、中根秀夫が映像を担当し1年間をかけて制作された。

ひとつの詩はひとつの時間を孕みながら、他のもうひとつの詩とその時間に接続する。詩の中の時間はそれぞれの記憶を持ち、その記憶はひとつの詩という枠を超え、過去とも未来とも自由に接続することが出来る。ひとりの作者の記憶はもうひとりの者の記憶へと接続され、その記憶はさらにまたひとりの別の記憶とつなぎ合わされる。そのようにして、記憶は少しづつそのポジションを変えながら私たちの空間を拡張し、またそれを満たしていく。

このプロローグのみ詩は字幕で示されている。冬の早朝、日の出直前の海で。

もういちど秋を from Hideo Nakane on Vimeo.

Unit 1

3月の浦和での展示で、試験的に武田(詩)/中根(映像)による「Unit 1」(但し音声無しの映像だけのバージョン)を公開したが、新たにかみむらの「音」を加えてレコーディングをし、映像も繋ぎ直した新しいバージョンとなる。ここで取り上げた幾つかのモチーフは今後のユニットに繋がっていく。「バラの呪文」はどこへ?「Unit 1」では映像として取り上げなかった「百合の伝言」もまたどこかで見ることができるかもしれない。
「なぜと尋ねないで 言葉だけが遅れてやって来ることを」

1-1. 版画論(3)風景
1-2. 1日の千の秋
1-3. 掌の森(Ⅱ)森の椅子
1-4. 予め失われた恋人たち

武田多恵子 1-1, 1-3, 1-4 『蜜月』 1-2『流布』より

Unit 2

「Unit 2」は物語の展開の場面でもあり、急激に速度を増しながら流れていく章でもある。私とて武田の詩について全てを理解できているわけではないし、それは無論不可能だろう。だが映像に於いてその解釈されない部分を解釈されないまま残すのは、ある意味では見る者にとっての自由が残されているわけで、見る者の記憶がそれを補うだろうと思っている。あるいは未解釈とされた部分は別のユニットに接続された時にまた再び語り始めることもあるだろう。

『もういちど秋を』は、各ユニットごとに3人のアプローチの配分を変えて作られている。この「Unit 2」の場合は、初めに中根(映像)/武田(詩)で作った「原型」に対してかみむらが「音」を重ねるという手順で作られている。映像にいくつものレイヤーを重ねて作られた美しい音の連なりがこのユニットの聴きどころであり見どころであると思う。

「青い磨り硝子で見ている」
8分40秒。ゆっくりとご覧頂ければと思う。

unit 2 from Hideo Nakane on Vimeo.

2-1. 四月の魚
2-2. 劣情No.5 - 猫に
2-3. 接吻試論
2-4. 真夜中の動物園
2-5. 函

武田多恵子『流布』より

Taeko Takeda (words), Taiichi Kamimura (saxophone), Hideo Nakane (video)

Unit 3

「Unit 3」に「会期を終えたばかりの美術館は 九月の海に似ている」という詩の一節があり、海に近い鎌倉の美術館で撮影をさせてもらった。この建物も三月に閉鎖され、今はただただ懐かしい。映像では「プロローグ」の終盤と3-3.3-5. に少しだけ登場する。

鷗(カモメ)というのはいつまでも見ていて飽きない愛おしい生き物だ。
「魔法のとけないシンデレラ 何度死んでも 生きて 鷗に笑われる」

3-1. 海へおいでよ
3-2. 鷗
3-3. 夢の海 '72
3-4. 海の夢 '85
3-5. 麦の耳
武田多恵子『麦の耳』より

Unit 4

『もういちど秋を』では、5つのユニット全体をつなぐ「海」あるいは「鳥」などの言葉が重要な要素となっている。「Unit 3」では、「鷗(カモメ)」が詩の一編としての独立した存在を示していたが、それ以外のユニットでも直接/間接を問わず、カメラは自分の内面と重ね合わせるように「鳥」の姿を捕らえている。今回の「Unit 4」では「丹頂鶴」をめぐり物語が展開する。

「Unit 4」は「冬」をテーマに編まれているが、例えば『冬の麦』のように、おそらく武田自身による「麦秋」という言葉から派生させたイメージとして、「ゴッホの7月」を描いた概念的な、あるいは言葉上の「冬」もその中に含まれる。「Unit 1」で使用した模型の木も再登場。かみむらのエフェクトを重ねた「音」が幻想の世界に誘う。4分51秒の短めの世界。

「私は凍えた耳を燃やして 伝わらなかった言葉の 灰を集めている」

unit 4 from Hideo Nakane on Vimeo.

4-1. 掌の森(Ⅲ)雪は踊っている
4-2. 積雪扉
4-3. 冬の麦

武田多恵子 4-1, 4-3『麦の耳』、4-2『流布』より

Taeko Takeda (words), Taiichi Kamimura (saxophone), Hideo Nakane (video)

Unit 5

『もういちど秋を』最終章。扱われるのは抽象度が高い詩篇だが、詩は新たに読み直され、現在の私たちそれぞれの日常に引きつけて考えるべきだろう。今回のプロジェクトではいろいろな「海」の映像を撮ったが、特に福島の海は忘れられない。あなたも忘れられない「海」や「街」があるだろう。

「糸くずに紛れて 紅に沈むひと日があるなら 夢は夢の場所へ帰るだろう 悲しみは悲しみの場所へ帰るだろう」

そして「もういちど秋を...」。

5-1. ふたつのみみ
5-2. 合歓
5-3. 盗む日(Ⅷ)バイ・バイ・ブラックバード
5-4. 流布

武田多恵子 5-1, 5-3『蜜月』、5-2『麦の耳』、5-4『流布』より

中根による作品メモ

 

略歴

□ 武田多恵子 TAEKO TAKEDA

詩人。詩集に『麦の耳』1986年、『流布』1993年、『蜜月』2013年 その他。
写真作家。2014年、2016年4月 神保町「クラインブルー」にて個展。ギャラリー檜を中心にグループ展多数。

□ かみむら泰一 TAIICHI KAMIMURA

サックス奏者(Tenor&Soprano Sax)響きと空間とジャズをテーマに独自な音楽を創作している。
15才のときにサックスに出会いその後、山口真文氏、須川展也氏、大室勇一氏に師事。東京芸術大学別科卒。バークリー音楽院卒。
84年頃からジャズサックスプレーヤーとして活動を開始、ジョージ大塚「we three」でデビュー。99年にNYでサックスの巨匠 Dewey Redman(~2006)より直々に指導を受ける。EWEレーベルより かみむら泰一Quartet「A Girl From New Mexico」(市野元彦g、西川輝正b、鳥山タケdr)、「のどの奥からうまれそうなかんじ」(Ben monder、Drew Gress、市野元彦、鳥山タケ)をリリース。2008年 是安則克b(故)橋本学drとサックストリオ、オチコチを立ち上げ、2012年 K`s Project レーベルより「オチコチ」をリリース。2014年からベースの齋藤徹とDuoでショーロ・即興の演奏をはじめ、Duoを中心に定期的に演奏活動を行う。2016年4月にアルバムChoro&Improvisationsをリリース。
ウェブサイト http://www.taisax.com/

□ 中根秀夫 HIDEO NAKANE

1992年 東京芸術大学美術学部絵画科日本画学科卒業 。1993年 The British Council の奨学金を取得し渡英。1995年 The Slade School of Fine Art 大学院絵画科修了。イギリス国内で展覧会に参加。
1996年帰国後、厚木市文化会館主催の個展、VOCA展97(上野の森美術館 梅津元推薦) 、The London Groupのメンバーとしてロンドンでの展示他、国内外でグループ展等へ参加する。2004年からはGalerie SOL で継続的に個展を開催する。
2014年 池内晶子との写真展 a white Day (Café & GalerÍa PARADA)、2015年 平田星司と共同企画の Aesthetic Life - Automatic 展(トキ・アートスペース)、かみむら泰一(Sax 即興)とのDVD製作 「Mellow Yellow Project」 など、企画性の強いプロジェクトに携わる。
ウェブサイト http://hideonakane.com/

 

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